
3連休は義父の最終引っ越しでした。
荷物を運び出して、部屋の中がどんどん空っぽになっていく。
最後のベッドを運び出した瞬間、部屋の空っぽさがなんだか切なくて、
胸の奥がぎゅうっとなりました。
夫は実家に着いた途端、ぽつりと
「やっぱり寂しいな…」と言いました。
その声を聞いたとき、言葉に詰まってしまいました。
これまで、夫とは介護のことでは何度もぶつかってきました。
「あなたの親のことでしょ!」って
怒りをぶつけてしまったことも、数えきれないくらいあります。
でも今日の夫の表情を見たら、
あのとき、夫の気持ちをちゃんと見てなかったかもしれないと思いました。
考えてないわけでも、寂しくないわけでもないのに。
私のしんどさが先に立ちすぎて、
夫の中の“息子としての寂しさ”が見えてなかったんだと思います。
施設へ行くと、義父はいつも通りでした。
片付けをしている私たちに声をかけながら、
「あれはこっちでええ」「それはこっちに置いといて」と、
いつもみたいに口を出してきて。
その感じが普段と変わらなくて、
なのに、どうしようもなく寂しくて。
娘は義父が他の入所者さんと話しているのを見て、
「じいじ楽しそうだね」と言っていました。
子どもの目にはそう見えたんだろうな。
でも私には、義父が“慣れようと必死にふるまっている”ように見えて、
胸が苦しくなりました。
その夜、義父に電話をしました。
「ご飯がちょっと足りないから、今度から少し足してもらおうと思う」
「少しお菓子も欲しいな」
そんなことを話していました。
いつもより話し方のテンションが高くて、
気を張ってるんだろうなと感じました。
ああ、ちゃんとがんばってるんだなと思う反面、
“足りない”って言葉が胸に刺さりました。
それは食事のことだけじゃなくて、
きっと、これまでの生活の“何か”が欠けているような気がして。
「足りないものがあったら行くから。いや、とりあえず明日顔見に行くわね」
そう伝えたものの、
電話を切ったあともしばらく義父の顔が浮かんで離れませんでした。
あの人なりに、
新しい場所での暮らしを受け入れようとしてる。
家族の前ではいつも通りを装って、
でもきっと夜は少し心細くなってる。
今日の引っ越しは、終わりのようでいて、
新しい形でつながっていくはじまりなのかもしれません。
帰り道、助手席の夫は黙ったままでした。
ハンドルを握る私も、
何も言えないまま運転していました。
それでも、
「また行くわ」と小さくつぶやいた夫の声に、
少しだけ救われた気がしました。
今日も読んでいただきありがとうございました。
ランキングに参加中です。